長年、いわき市・双葉郡の復興と発展を支えてきた事業を、次世代へ確実にバトンタッチしたい」 そう願う経営者の皆様にとって、事業承継は避けて通れない課題です。
しかし、手続きを一歩間違えれば、長年守ってきた「許認可」を失うリスクがあることをご存知でしょうか?
事業承継は「相続」ではなく「経営のバトンタッチ」
中小企業経営者の皆様、事業承継は単なる「資産の相続」ではありません。
それは、これまで築き上げてきた「ヒト(経営)」「資産」「知的資産(ノウハウ、信用、理念)」という多様な財産を、後継者にスムーズに引き継ぎ、承継後の経営を安定させるための「総合プロジェクト」です。
多くの企業で後継者不足が深刻化し、社長の平均年齢の高齢化が進む中、事業承継は「いつか」ではなく「今」取り組むべき最重要課題となっています。
行政書士は「戦略的伴走者」
行政書士は、この複雑なプロセスにおいて、単なる書類作成の代行者ではなく、経営者の皆様を多角的にサポートする「戦略的伴走者」としての役割を担います。
行政書士に依頼するメリット:3つの支援シーン
行政書士が事業承継の現場で、特に力を発揮し、経営者を深くサポートできる具体的なシーンをご紹介します。
1.「見えない資産(知的資産)」の可視化
事業承継を円滑に進めるには、最低5年、通常10年といった長期の計画的準備が必要とされています。行政書士は、この準備の第一歩である「見える化」を支援します。
• 現状分析と課題特定
経営者と後継者に詳細なヒアリングを行い、会社の将来ビジョン、事業資産、「どんな人に、どのように引き継がせたいか」という意向を整理します。
• 事業承継計画書の策定
この分析に基づき、代表交代の時期や株式移転、後継者育成計画などを盛り込んだ事業承継計画書の策定を支援します。
この計画書は、金融機関との協議や各種税制優遇措置の適用検討の土台となります。
• 知的資産の棚卸し
財務諸表には表れない「知的資産」(経営理念、熟練工の技術、顧客ネットワークなど)は、企業の競争力の源泉です。
行政書士は、この知的資産を「見える化」するための「事業価値を高める経営レポート」の枠組みに沿った作業を支援できます。
2. 感情の調整と他士業連携のハブ機能
特に家族経営では、事業承継の話し合いが感情的な対立(ケンカ)に発展し、トラブルになるケースが少なくありません。
• 中立的な第三者としての対話支援
行政書士は、現経営者と後継者の間で意見や利害が対立しやすい状況を認識し、中立的な専門家として間に入り、対話の調整(ファシリテーション)を行います。
これにより、客観的な「数字」をベースに冷静な話し合いを促進し、円滑なバトンタッチをサポートします。
• 他士業連携のハブ(結節点)
事業承継は、税務(税理士)、登記(司法書士)、法務(弁護士)など、多岐にわたる専門家を必要とする総合プロジェクトです。
行政書士は、「最初の相談窓口」としてクライアントの課題を整理し、自らの業務範囲を超えた課題(M&Aのマッチングや税務判断など)については、事業承継・引継ぎ支援センターや他の専門家へスムーズに紹介・連携する「ハブ」の役割を担います。
3. 補助金(事業承継・引継ぎ補助金)の活用支援
事業承継には多額の資金が必要となることが多く、国の支援策の活用は極めて重要です。
• 補助金申請の代行
行政書士は、「事業承継・引継ぎ補助金」唯一の国家資格者です。
申請書の完成度や事業計画の説得力は採択の成否に影響するため、行政書士が作成・提出を代行することで、経営者は本業に集中しつつ、採択率向上に寄与する文書を整備できます。
• 承継税制・融資のための法的文書作成
事業承継税制の適用や金融機関の融資を受けるための前提となる事業承継計画書の策定や、経営承継円滑化法に基づく認定申請手続きの支援を行います。
【最重要】社長交代で許可証が紙切れに?許認可リスクの真実
行政書士が事業承継を支援する上で、経営者を守るために細心の注意を払うべき、特に重要な3つのリスク管理上の注意点があります。
「株式譲渡」と「事業譲渡」で手続きは全く違う
事業の継続には、業法に基づく許認可(建設業許可、運送業許可、飲食店営業許可、産廃業許可など)の有効性が不可欠です。
許認可の承継可否は、「承継スキーム(株式譲渡 or 事業譲渡)」と「根拠となる法律」の組み合わせで決まります。
- 株式譲渡は法人が存続するため、多くの許認可は維持される可能性が高い(届出で済む)。
- 一方事業譲渡は「別人」への資産移動となるため、原則として新規取得が必要となる可能性があります。
- 近年は法改正により、事前の認可があれば承継できる業種が増えています(建設業、旅館業、運送業の一部など)。正確には信頼できる行政書士か行政窓口にご相談してみることをおすすめします。
- 建設業法や旅館業法などの改正(2020年以降)により、事業譲渡でも「事前の認可」があれば承継可能となるケースが増えていますが、手続きは厳格です。
業種別難易度(建設業・運送業・産廃業・診療所等)
| 難易度 | 業種(許認可名) | 株式譲渡(会社ごと) | 事業譲渡(事業のみ) | ポイント |
| 高 | 建設業 | 届出(原則維持) | 要事前認可 | 2020年法改正で承継可能になったが、事前審査が必須。 技術者の常勤性が鍵。 |
| 高 | 運送業 | 届出(原則維持) | 要認可 | 譲渡譲受の認可が必要。 役員の法令試験が必要な場合あり。 |
| 中 | 産業廃棄物処理 | 届出(原則維持) | 新規取得 | 事業譲渡では原則取り直し。 許可が降りるまで営業できない空白期間リスク大。 |
| 特 | 診療所・病院 | 管理者変更届 | 新規開設 | 開設者が「個人」か「医療法人」かで激変。個人の場合は相続以外原則取り直し。 |
株式譲渡(株主の変更)であっても、事前の認可や承認が必要な特殊な業種(例:運送業の一部における支配権の異動など)が存在します。
株式譲渡の場合の手続きは簡易であると思い込まないよう、個別の確認が必要であることは言うまでもありません。
古物商許可の意外な落とし穴
- 株式譲渡なら「役員変更届」のみで事業継続可能(最も安全)。
- 事業譲渡・合併・分割の場合、「事前の承認申請」を行えば許可を承継でき、空白期間(営業停止)を回避できる。ただし、承継日が1日でもズレると無許可営業のリスクがある。
- 警察署(公安委員会)の標準処理期間を逆算し、クロージング日を設定する。
- 買い手企業が既に古物商許可を持っている場合、単なる「営業所の新設・変更届」で済む場合が多い。
- 許可を持っていない買い手が事業譲渡を受ける場合、事業譲渡の効力発生日より前に承認を受けなければならない。事後申請は不可(=新規取り直し)。
- 「事業譲渡」かつ「買い手が許可を持っていない」ケースであれば、直ちに管轄の警察署(防犯係)へ「承継申請の事前相談」のアポイントを入れてください。
- M&Aで店長が辞める場合、即座に代わりの管理者を選任し届け出る必要がある。
- 自社サイトやAmazon・楽天等のストアで販売する場合、URLの届出が必要。ドメインの所有権移転とセットで手続きを確認する。
- 法人が変われば、従業員が携帯している「行商従業者証」も全て作り直しになる。
致命的なリスクを回避するためには
事業承継における許認可は、M&Aのスキーム(株式譲渡か事業譲渡か)によって手続きが根底から覆ります。最悪の場合、承継後に「無許可営業」となり事業停止に追い込まれるリスクがあります。
従って計画段階(プレ承継期)で、行政庁への事前協議を行うことが不可欠です。
許認可の視点からの進め方
事前相談→スキーム確定→申請→クロージング
1人の過去が会社を潰す?「欠格要件」のチェックリスト
欠格要件のチェックは「最重要のキル・リスク(破談要因)」
どれだけ財務状況が良くても、承継後の役員や株主に一人でも「欠格事由」に該当する人物がいれば、承継した瞬間に許認可が取り消され、事業価値がゼロになる恐れがあります。
役員だけじゃない!5%株主や顧問も審査対象
| 厳格度 | 業種 | 特徴的なチェックポイント(例) | リスク |
| 極高 | 産業廃棄物処理 | 役員だけでなく「5%以上の出資者」「相談役・顧問」も対象。非常に範囲が広い。 | 許可取消リスク最大 |
| 高 | 建設業 | 過去に役員を務めた会社が処分を受けていないか(連鎖的欠格)。 | 公共工事入札参加資格の剥奪 |
| 中 | 宅建業 | 禁錮以上の刑、宅建業法違反による罰金刑など。 | 免許取消 |
1人の過去が会社の未来を奪う。「今はクリーン」でもダメ。
欠格要件チェックの要点の一例
- 対象者の範囲
- 登記上の取締役だけでなく、「相談役」「顧問」や「5%以上の株主」、「政令使用人(支店長・工場長)」も審査対象になる業法(建設業、産廃業など)がある。
- 5年ルール
- 禁錮以上の刑、または特定業法違反で罰金刑を受け、その執行が終わってから5年を経過しているか。
- 過去の取消歴
- 過去に役員をしていた会社が許可取消処分を受けた際、その聴聞通知の直前に辞任して逃れていないか(これも5年間NG)。
- 破産手続き
- 破産手続開始の決定を受けて復権を得ているか。
- 暴力団排除
- 構成員であることは論外だが、「密接交際者」と認定されるようなグレーな交際がないか。
資格者という「人的要件」
資格を持ったキーマンが辞めると、M&A成立翌日に許可取消の危機に直結します。資格者が今後も在籍するかどうかのチェックは大変重要です。
この手続きを誤ると、承継実行日に許認可が失効し、事業活動自体が違法となり営業停止に追い込まれる「空白期間」が生じるという、致命的な事業継続リスクが発生します。
| 建設業の(例) | 経営業務の管理責任者(経管)や専任技術者の要件。 許可の空白期間が生じないよう、時間軸の判断が重要 。 |
予防法務の徹底(急逝リスクと家族トラブル対策)
事業承継の準備期間中に、現経営者が病気や急逝により引退せざるを得なくなるリスクに備える必要があります(急逝により承継が頓挫した事例も報告されています)。
遺言・後見の提案
行政書士は、遺言書の作成支援や任意後見契約の活用を通じて、不測の事態に備え、事業用資産がスムーズに後継者に引き継がれるための予防法務的な提案を行います。
合意文書の作成
親族間での株式や財産の分配方針を「口約束」ではなく、遺産分割協議書や各種契約書として法的に有効な文書(権利義務に関する書類)に落とし込み、将来的な紛争を予防します。
他士業の独占業務(業際)の厳格な管理
行政書士は、幅広い業務で経営者を支援しますが、他の法律で制限されている業務(他士業の独占業務)には関与できません。
禁止行為の厳守
税務申告や具体的な税務相談(税理士の独占業務)、登記申請(司法書士の独占業務)、および紛争性のある交渉や訴訟(弁護士の独占業務)は行政書士の業務範囲外です。
連携体制の構築
行政書士は、これらの独占業務に該当する課題が発生した場合、速やかに連携している専門家(税理士、司法書士、弁護士など)へトリアージ(振り分け)し、あくまで自らの専門である許認可や申請、法務文書作成を通じてサポートを継続します。
まとめ::行政書士をセカンドオピニオンや相談窓口に
事業承継は、経営者にとって人生最大の仕事の一つであり、「事業を止めてはいけない」という重圧の中で進める必要があります。
行政書士は、許認可と申請手続きという事業継続の生命線を担保しつつ、計画策定や感情的な調整を伴走支援することで、経営者の皆様が安心して次のステップに進むための「安全装置」となりえます。
事業承継についてお悩みの方は、まずはお近くの行政書士または、相談無料・秘密厳守で中立的な立場から支援を行う事業承継・引継ぎ支援センターにご相談ください。
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福島県事業承継・引継ぎ支援センター(経済産業省委託事業) TEL: 024-954-4163

