2026年1月1日、改正行政書士法が施行されました 。

今回の改正は、これまで「コンサルティング」という名目の影に隠れていた無資格者による行政手続き代行に対し、厳格なメスを入れるものです 。

「知らずに無資格者に依頼していた」――。

それだけで、企業のコンプライアンス体制が問われ、社会的信用を失墜させる時代がやってきます 。

本記事では、意図せぬ法令違反を回避し、持続可能な経営基盤(ガバナンス)を守るためのポイントを解説します 。

法改正で「何が」変わるのか?:潜脱行為の完全封鎖

今回の改正のポイントは

「潜脱行為の完全封鎖」(法令で禁止されている方法”以外”の方法により免れようとする行為のこと)

「責任所在の明確化」です。

  • 「名目」を問わない報酬の定義(第19条)
    • 「コンサル料」「システム利用料」「事務手数料」など、いかなる名目であっても、実態が書類作成の対価であれば処罰対象であることが明文化されました(第19条)。
  • 組織への厳罰化:両罰規定の導入(第23条の3)
    • 違反した本人だけでなく、その所属法人(無資格コンサル会社等)も最大100万円の罰金に処されます(第23条の3)。
    • これにより、組織的な無資格業務への追及が格段に厳しくなります。
  • 行政書士の使命の再定義(第1条)
    • デジタル社会において、公正な手続きを担保するプロフェッショナルとしての役割が明確化されました 。

第二十三条の三 
法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、第二十一条の二、第二十二条の四、第二十三条第二項又は前条の違反行為をしたときは、その行為者を罰するほか、その法人又は人に対して各本条の罰金刑を科する。

行政書士法 第9章 罰則

簡単に言うと、「部下が仕事で悪いことをしたら、実行した本人だけでなく、雇い主(会社や所長)もセットで罰しますよ」というルールです。

委託先が「アウト」になる具体例

SDGsの観点からも、不透明な取引は「不公正な商慣習」と見なされます。

以下のケースは法令違反となる可能性の高い例です。

  • 補助金コンサルの「一括代行」
    • 「採択報酬」の中に申請書類の作成・提出代行が含まれているが、名目が「コンサル料」「システム利用料」「事務手数料」等となっている場合。
  • 専門外の「ついで依頼」
    • 建築士に旅館業許可を、税理士に建設業許可の書類作成を「ついで」に依頼し、報酬を支払っている行為。
  • デジタル申請の「なりすまし」
    • 委託先が企業のID・パスワードを借りて本人になりすまして送信する行為。(代理送信には行政書士の職権が必要です。 )

自動車販売・登録における「落とし穴」

  • 車両代金に「代行費用」を紛れ込ませる行為(名目不問の報酬定義に抵触)
    • 「無料サービス」も報酬とみなされる点
      • 販売代金や整備代金等に含まれていると評価される場合、作成費用を無料としていても行政書士法違反となります 。
  • 販売員による警察・陸運局窓口での「訂正・追記」(使者の範囲を逸脱)
    • 訂正・補正の禁止
      • 警察署や運輸支局で窓口職員から求められた場合であっても、行政書士でない販売員がその場で追記・訂正を行うことは許されません。
  • 社内システムによる申請書の自動生成・印刷(事実上の書類作成代行
    • 社内データベース(DB)利用の危険性
      • 顧客データから申請書を自動生成する行為も、業としての書類作成に該当し違反となります。

自動車販売(車庫証明・登録)における「無自覚な違反」のリスク

2026年の法改正に伴い、日本行政書士会連合会は自動車販売店等に対し、これまで「サービス」や「事務手数料」として行われてきた慣習への警告を強めています。

  • 「車両代金に含まれる」は報酬とみなされる
    • 作成費用を無料としていても、販売代金等に対価が含まれると評価される場合、無資格者による書類作成は法違反となります。
  • 窓口での「ちょっとした修正」が命取り
    • 警察署や運輸支局の窓口で、車台番号の追記や誤字の訂正を販売員が行うことは、たとえ職員から求められた場合であっても行政書士法違反となるおそれがあります。
  • 「使者(ししゃ)」の限界とリスク
    • 販売店の従業員が書類を持参する「使者」自体は直ちに違法ではありませんが、窓口での訂正、補正、追記は一切許されません 。
    • (販売員など)による申請の場合、日付や車台番号の追記を含め、一切の修正が認められないため、実務上のリスク(手続きの停滞)が非常に大きくなります。
    • 警察署や運輸支局の職員から求められた場合であっても、これに応じることは行政書士法違反となるおそれがあります 。

企業としては、自社の販売員を法的なリスク(両罰規定による最大100万円の罰金など)から守るためにも、行政書士が適切に関与する体制を整えることが急務です。

「支援(コンサル)」と「作成(代行)」の境界線

どこまでが合法なアドバイスで、どこからが違法な代行なのか。

その境界線を明確に理解しておく必要があります。

  • セーフ:
    • 公募要領の解説
    • 事業計画の「ブラッシュアップ(助言)」
    • 本人が作成する際の指導
    • 本人が作成した書類を「持参するだけ」
  • アウト:
    • 申請書の様式への具体的な文言・数値の入力
    • ヒアリングに基づく「代筆」
    • 事業者が中身を確認・押印するだけの状態
    • 窓口での修正・追記
      • 現場での修正ができないため、手続きの遅延や混乱を招くリスクがあります

自社防衛のためのチェックポイント

企業の社会的責任(CSR)を果たすため、以下の項目で委託先のリーガルチェックを行いましょう 。

監査項目チェック内容確認方法の例
資格の有無担当者または監修者が「行政書士」として登録されているか。行政書士名簿での検索・登録証の写し
法人形態契約相手が「行政書士法人」または「行政書士事務所」か。登記簿謄本・契約書名義
名目と実態報酬名目が「コンサル料」等になっていても、実態が「書類作成代行」ではないか。【要注意】
名目を問わず報酬を得れば違法
自動車関連手続き車庫証明の配置図作成や登録書類の作成が、販売代金とは別に「行政書士報酬」として計上されているか、または行政書士が関与しているか。委任状の受取先や、申請書の代理人欄に行政書士の記名があるかを確認。
報酬の内訳請求書や見積書に「行政書士業務報酬」の項目が明記されているか。【重要】
曖昧な「一括費用」はリスク高
抱き合わせ契約他の業務(管理費や顧問料)に、書類作成費用が隠れて含まれていないか。【要注意】
実質的な対価とみなされる可能性
作成の主体申請書の文案作成や数値入力を、無資格の委託先が「代筆」していないか。【NG】
思考・記述の主体が委託先なら違法
確認プロセス貴社(依頼主)が内容を理解せず、押印(電子署名)だけする運用になっていないか。【危険】
貴社の管理責任が問われる可能性
デジタル対応電子申請において、委託先が貴社のID/PWを借りて「本人になりすまし」ていないか。【NG】
代理送信は行政書士の職権が必要
守秘義務行政書士法に基づく厳格な守秘義務が契約に含まれているか。法第12条に基づく法的義務の確認
職務倫理改正法第1条(行政書士の使命)に基づき、公益性に配慮した助言があるか。
【公益性に配慮した助言とは】
1.法の趣旨(目的)の遵守
2.不当な利益追求(脱法行為)への制止
3.行政手続きの透明性と正確性の担保
4.ステークホルダー(利害関係者)への配慮
5.情報の適切な開示と説明責任(アカウンタビリティ)
企業の社会的責任に直結
【「公益的な助言」を受ける3つのメリット】
1. 長期的リスクの回避(コンプライアンス)
2.社会的信頼の獲得(ブランディング/ESG)
3.事業の持続可能性(サステナビリティ)
  • 「要注意」に1つでも該当する:
    • 【改善推奨】 契約書の見直し、または委託先への資格確認が必要です。
    • 実態として「無資格者による書類作成」が行われている可能性があります。
  • 「NG」「危険」に該当する:
    • 【要再検討】 改正法における「両罰規定」の対象となったり、取得した許認可がコンプライアンス違反として取り消されたりする重大なリスクがあります。
    • 早急に専門家(行政書士)への相談を推奨します。

持続可能な経営のために:リーガルチェックの推奨

2026年以降、「知らなかった」では済まされないリスクが顕在化します 。

無資格者への依頼は、企業のガバナンスを根底から揺るがす行為です 。

「今の外注先は大丈夫か?」「この契約は法に触れないか?」

少しでも不安を感じられた方は、まずは現行契約のリーガルチェックから始めましょう 。

当事務所では、改正法に対応した適法な支援を通じて、貴社のSDGs・ESG経営をサポートいたします

免責事項

  1. 情報の正確性について
    本記事の内容は、2026年1月時点の「行政書士法」および関連法令、公表されている指針等に基づき、細心の注意を払って作成しております。しかしながら、法令の解釈や運用は行政庁や時期によって異なる場合があり、その完全性や正確性を永久に保証するものではありません。
  2. 法的助言の否定
    本記事は一般的な情報の提供を目的としたものであり、特定の個別案件に対する法的助言(リーガルアドバイス)を構成するものではありません。個別の事案については、必ず当事務所または管轄の行政窓口、その他の専門家にご相談ください。
  3. 責任の限定
    本記事に掲載された情報を用いて利用者が行った一切の行為、およびそれによって生じた損害(直接・間接を問いません)について、当事務所は一切の責任を負いかねます。情報の利用は、利用者自身の判断と責任において行ってください。
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