突然の「会計検査院」からの連絡にも慌てないために

「補助金事業に関して、会計検査院の実地検査に入ります」 ある日突然、このような連絡が来て動揺しない経営者はいないでしょう。

補助金は「貰って終わり」ではありません。

税務調査とは異なり、国の税金が適正に使われているかをチェックする会計検査院の検査は、不備があれば「補助金の返還」を求められる厳しいものです。

しかし、恐れる必要はありません。

日頃の適切な帳簿管理と、検査の意図を理解した事前準備があれば、堂々と対応することができます。

本記事では、行政書士およびSDGs導入コンサルタントの視点から、実地検査の流れと、今すぐ確認すべきポイントを解説します。

会計検査院の実地検査とは?税務調査との違い

税務調査が「脱税がないか(税金を正しく納めているか)」を見るのに対し、会計検査院の検査は「税金(補助金)が目的通り、効率的に使われているか」を確認します。

  • 対象
    • 国の補助金(ものづくり補助金、事業再構築補助金など)を受給した企業・団体
  • 目的
    • 会計経理が予算執行の適正さを欠いていないか、効果的な事業が行われているかの検証
  • リスク
    • 用途外使用や書類の不備、過大請求が発覚した場合、補助金の全額または一部返還に加え、加算金が課される可能性があります。

会計検査院の検査とは?対象と5つの観点

【会計検査院のホームページより】
 会計検査院が検査する対象は、国のすべての会計のほか、国が出資している政府関係機関、独立行政法人などの法人や、国が補助金、貸付金その他の財政援助を与えている都道府県、市町村、各種団体などです。

(1)検査の方法
検査には、主に「書面検査」と「実地検査」の二つの方法があります。
書面検査は庁舎内で、検査対象から提出された計算書や証拠書類を検査するもので、実地検査は、検査対象機関の事務所や事業が実際に行われている現場に出張して行う検査です。

(2)検査の観点
「正確性」の観点
検査対象機関の決算の表示が予算執行など財務の状況を正確に表現しているかという観点です。
「合規性」の観点
検査対象機関の会計経理が予算や法律、政令等に従って適正に処理されているかという観点です。
「経済性」の観点
検査対象機関の事務・事業の遂行及び予算の執行がより少ない費用で実施できないかという観点です。
「効率性」の観点
検査対象機関の業務の実施に際し、同じ費用でより大きな成果が得られないか、あるいは費用との対比で最大限の成果を得ているかという観点です。
「有効性」の観点
検査対象機関の事務・事業の遂行及び予算の執行の結果が、所期の目的を達成しているか、また、効果を上げているかという観点です。


以下はある補助金での私の体験をもとにまとめてみました。

※あくまで体験したことをベースにまとめたものであり、他のケースに100%該当するかどうかはわかりません。

実地検査の通知から当日までのスケジュール


【検査までの流れ】
「会計検査院の立入検査の企業に指定されました」
「実施日は○○月××日です」「日程の変更は原則できません」

補助金の事務局より、会計検査院の立入検査の概要についてのレクチャーがありました。
「検査が行われる内容」「用意するべき資料、書類」「検査当日の注意点」

社内・補助金事業に関係する取引先との間で「確認」と「打合せ」行い、当日の検査に臨みました。

検査当日の流れとスケジュール感

検査は通常、数週間前に事前通知があり、日程調整の上で行われます。

当日は検査官2~3名が来社し、以下の流れで進むのが一般的です。

  • 概況説明
    • 事業の概要、経理処理のフローなどを説明します。
  • 書類確認
    • 請求書、領収書、振込控、納品書、出勤簿などの突合を行います。
  • 現物確認
    • 補助金で購入した設備や機械が、申請通りの場所にあり、適切に稼働しているかを確認します。
  • 質疑応答
    • 不明点について質問されます。その場で回答できない場合は、後日資料を提出します。
  • 講評
    • 当日の検査結果の概要が伝えられます。

プロの助言

検査官は「不正を見つける」ことだけが目的ではなく、「正しく使われているかを確認する」ために来ています。

敵対するのではなく、誠実かつ論理的に説明することが重要です。

検査当日の持ち物・必要書類リスト


・電源延長コード(ノートパソコン等を使用する場合に備えて)
・ヘルメット、ジャンパー、制服、軍手など(工場や倉庫などがある場合には現場視察があります)

立会い者の心構えと対応ポイント


代表取締役またはそれに準ずる立場の方の出席は必須。

・その他出席が必要な関係者。
「補助金全体の内容を説明できる責任者または担当者。」
「敷地内の図面、設備の配置を説明できる責任者または担当者。」

「設備の内容、点検、稼働状況を説明できる責任者または担当者。」
「製作品を説明できる責任者または担当者。」
「経理内容を説明できる責任者または担当者。」

検査の事業に関係していない取締役、管理職、社員、外部関係者は同席を認められない場合もあります。

【確認される書類・資料(例)】
・総勘定元帳(2期分以上)期間がまたがる場合には3期分程度。
・固定資産台帳。
・銀行通帳。
・補助金の各種申請書、通知書。
・雇用関係書類(※雇用が支給要件になっている補助金の場合)
・土地取得・土地造成・建物取得・設備取得に関する「見積書」「請求書」「銀行振込受領書」など

現場視察でチェックされる重要項目


・鋲、補助金シールの確認。
・補助対象外工事(外構工事、水道敷設工事の外部配管工事)の場所の特定。
・現地の配置図等があるとよりスムーズになります。

※設備についてのポイント
補助金で購入した設備と他の設備を区別して管理
既存設備との違いを説明できること
使用方法使用頻度を説明できること
稼働状況、使用実績がわかること

【要チェック】指摘されやすい3つのポイントと事前準備

検査で特に厳しく見られるのは以下の点です。

今のうちにセルフチェックを行いましょう。

1. 「お金の流れ」と「証憑」の一致

見積書・発注書・納品書・請求書・振込控の一連の流れ(日付、金額、品目)に矛盾はありませんか?

  • 対策: 全ての証憑を時系列に整理し、インデックスを貼って即座に提示できるようにファイリングしておきましょう。

2. 経費の区分(按分)の明確化

補助事業と通常の事業で経費が混在していませんか?

例えば、補助事業専用として購入したPCを、他の業務に使っていないか等が問われます。

  • 対策: 稼働日誌や管理台帳を作成し、補助事業にのみ使用している実態を客観的に証明できるようにしてください。

3. 取得財産の管理状況

購入した機械がホコリを被っていたり、勝手に配置換えされていたりしませんか?

対策: 「補助事業により取得」と明記したシールやプレートを貼付し、資産台帳と現物を一致させておきましょう。

SDGs経営とコンプライアンスの関係

SDGs(持続可能な開発目標)の目標16には「平和と公正をすべての人に」があり、これには組織のガバナンス(企業統治)強化が含まれます。

補助金の適正な管理・運用は、単なるルール守りではなく、「公的資金をお預かりして社会に貢献する」という企業の社会的責任(CSR)そのものです。

日頃から整備された帳簿と透明性のある資金管理は、検査対策になるだけでなく、取引先や金融機関からの信頼(社会的信用)を高める強力な武器になります。

行政書士は、書類作成とその代理、およびそれに付随する業務を行えますが、「紛争性のある事案での交渉代理」はできません。
会計検査院の立ち合い「立ち会い」においても、あくまで円滑な進行や説明の補佐という立場です。

  • 書類の整合性を説明する
  • 検査の進行を補助する
  • 事実関係を補足する

不安な場合は専門家にご相談ください

「書類に不備がないか自信がない」

「検査官にどう説明すればいいかわからない」

そのような不安をお持ちの経営者様は、当事務所にご相談ください。

行政書士として、以下のサポートが可能です。

検査当日の立ち会い: 検査の円滑な進行をサポートし、不当な指摘に対しては法的な観点から適正性を主張する補佐を行います。

模擬検査の実施: 検査官の視点で書類や現場を事前チェックし、リスクを洗い出します。

書類整備サポート: 不足書類の確認や、論理的な説明資料の作成を支援します。

補助金検査は「準備」が9割です。

返還リスクを最小限に抑え、本業に集中できる環境を守りましょう。

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